2021年新年のメッセージ

2021年を迎えて

令和3年、西暦2021年が始まりました。皆様、明けましておめでとうございます。

昨年は当たり前にあったもの、当たり前の行動が大きく変わってしまった年でした。新型コロナウイルス感染対策で、直接集まり、顔を合わせて話し、共有する。今まで当たり前のように楽しんでいた日常が、今となっては、懐かしくも輝かしい果実のように感じてしまいます。

しかしながら、過去を想うばかりでは前へ進むことができません。昨年8月に郡山で行われるはずだった年会は、オンライン形式で三鷹の国立天文台を本部として実施されました。実行委員会の尽力で、手探りの中準備が進められ、試行錯誤の繰り返しを経て、滞りなく年会が実現できたことは新たな時代への幕開けともいえるでしょう。実行委員会の皆様、参加者の皆様、招待講演の皆様には大変感謝いたします。オンラインでの年会実施という今までと違う形式に戸惑いながらも、蓋を開けてみれば、参加者数過去最多を記録し、またアメリカ在住の講演者にスピーチしていただくことが可能になるなど、オンライン開催の恩恵も感じることができました。

その後、各支部の支部会もオンラインで活発に企画、実施されました。支部会に限らず、会員主催の研修会、講演会などなど多岐にわたる分野での活動がありました。直接集まることはできないものの、オンラインの強みを活かしての交流が進んだのではないかと感じています。

一日限りの会合ではなく、深く天文教育を含む科学教育、科学コミュニケーションを考える、三鷹科学教育&科学コミュニケーションゼミが、国立天文台の縣さんを中心に始まりました。国際的な趨勢に触れ、科学論文の書き方を学び、論文執筆を目標とする取り組みです。「天文教育」誌を始め、天文教育に関する論文掲載数は、さほど多くないので、今後の発展に期待が膨らみます。

このゼミは若手天文教育普及WGと天文教育論文アーカイブWGの主催で、若手WG代表でつくばエキスポセンターの三浦さんら、複数の若手WGのメンバーも参加されています。若手WGは、今年の2月にオンライン研修会を企画されるなど活発に活動されています。こちらの活動も大いに期待をしているところです。

国際交流という点からは、和歌山大の富田さんを中心としたIAU天文教育コーディネーターWGが日本のNAEC; National Astronomy Education Coordinatorの実質的窓口を担っています。NAECとは世界天文学連合(IAU)が設置した「教育のための教育推進室」(OAE)により、各国に設置を呼びかけられたものです。各国のNAECから寄せられる世界各地の観測イベントと日本国内をつないでくださっています。昨年の9月には、OAD(社会発展のための天文学推進室)の要請を受け、国連第75回総会対話Astronomy – a Unique Educational Tool for furthering the SDGにおいて、星つむぎの村の高橋さんが作られたビデオが紹介されました。世界の活動に参加したり、日本から発信する機会がNAECを通じて広がっています。

天文教育、科学教育や科学コミュニケーションに関する国際会議は、オンライン化の波の中、高額な参加料、旅費を使わずに、無料で閲覧できるものも少なからず見られるようになり、敷居の高い国際会議の雰囲気や議論を、手がるに見る、知ることができる環境となっています。このような情報は、本会のメーリングリストで活発に情報交換がされていますので、本誌のみの購読で、メーリングリストに登録されていない方は、ぜひ登録をご検討ください。jimu@tenkyo.netまで、「メーリングリスト参加希望」と書いてお申し込みください。本文には、お名前、所属、所属支部をお書きください。

講演や会合だけにとどまらず、例えば昨年年末に、大きく話題になった木星と土星の大接近の際にも本会会員の皆様の尽力で多くの人が天体・宇宙を楽しめる環境を作ってくださいました。平塚市博物館の塚田さんが、早速解説ポスターを作ってくださり、年会でも発表のあった、なよろ市立天文台の内藤さんらが主催する木星・土星“超”大接近観測プロジェクトが動き、多くの人々が空を眺めるきっかけを作ってくださいました。私の勤務する高校でもポスターを掲示したり、授業の枕で紹介したりしました。12月21日の夕方に観測会を開催し、冬休み期間に入っているのにもかかわらず、100人を超える生徒、教職員が屋上に集まってくれました。

このような、行動が制限された中でも、本会の皆様は、工夫を凝らし、活発な活動を継続されてきました。本会は、そのような積極的な活動を支援していきたいと思います。

毎年、楽しみにしている年会ですが、現在のところ本年の実施形態はまだ検討中です。海外でワクチン接種が始まったものの、依然国内では感染者の増大が続いており、先を見通せない状況が続きます。年会を含め、支部会、講演会や研修会、さまざまな催しが行えることを私たちは経験してきました。画面を通して、状況が許せば直接対面で、皆様とお会いできる日を楽しみにしております。

今年、一年が皆様にとって佳い年でありますよう、お祈り申し上げます。

 

2021年1月1日

会長 松本直記