2024年新年のメッセージ

2024年、常識を疑う

年が改まり、2024年となりました。元旦に発生しました令和6年能登半島地震では、多くの方の命が失われてしまいました。また、いまだ避難されている方も多く、不便な生活を強いられています。被災者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。

今回の地震は、プレート境界の地震ではなくプレートどうしの押し合いによる圧縮力でプレート内部の弱線が破壊して生じる内陸型地震、いわゆる直下型地震です。地震の規模を表すマグニチュードはプレート境界の海溝型地震に比べ小さいが、震源が浅く居住地にも近いので規模の割には被害が大きいと、理科の授業では扱います。まさに教科書通りです。しかし、同じ内陸型地震の1995年阪神・淡路大震災(M7.3)を越え、M7.6には驚きました。2011年東日本大震災のM9.0にも驚きましたが、自然はいとも簡単に想像を超えてきます。

昨年の夏、修学旅行で東北を旅しました。津波で甚大な被害を受けた陸前高田市の海岸沿いは広大な空き地となっていました。その先には巨大な堤防が長く長く建造されていました。空き地は海沿いの住宅地でした。未曾有の大災害を受けて便利な海沿いに住むという常識が覆されてしまったのです。

このたびの災害からは、こんなことが起こるはずがない、という常識を疑わなくてはならないということを示唆しているように思えます。

同じく昨年の夏、勤務校が甲子園に出場し、丸坊主ではない長髪の選手たちに様々な反響がありました。好意的な意見もありましたが、「高校球児らしくない」などの批判も強く受けました。しかし選手たち、スタッフたちはそのような意見があることを受け入れながら、「自分たちで常識を創っていくんだ」という気概で試合を重ねていきました。

日々生活する中で、様々なことを行います。仕事もその一つです。本会会員の皆さんが熱心に行われている天文教育普及活動もそうでしょう。様々な活動の中、「常識を疑う」ことを今年は考えていきたいと思います。やることが回り始めると、始めたときの工夫や気づきに欠け、よりよい道筋が閉ざされてしまうことがままあります。常識を疑い、身の回りや活動に関して、改めて見直して行くことを心がけようと思います。

本会の活動に目を向けると、メーリングリストでの情報交換、議論や、各支部での支部会も対面・オンラインで活発に行われています。ワーキンググループ活動も活発で、若手天文教育普及WGはオンラインイベントや観望会デザインをテーマにした宿泊型の研修を企画されています。Mitakaによる天文教育普及WGはワークショップを開催します。会員メーリングリストへの投稿をきっかけに、次期学習指導要領への提言を検討する新たなWGが設置され、提言を編んでいきます。また、昨年発売され大きな反響を呼んでいるスマート望遠鏡、SeestarS50の情報交換を行うメーリングリストが設置され、天文教育普及への活用研究が進んでいます。思えば、この望遠鏡は今までの常識を覆すものでした。今までは画像でしか提示できなかった天体が実際の観測で比較的簡単に示すことができます。この望遠鏡の活用で、天文教育の常識も覆るのではないかと感じています。いや、当会の力で新たな常識を創って行こうと思います。

2024年1月1日
松本 直記 (日本天文教育普及研究会 会長)