2021/1/22 16:53PM
Category: 中部支部

2020年度日本天文教育普及研究会中部支部会(プログラム)

2020年度の日本天文教育普及研究会・中部支部研究集会は、昨今の状況を考え、2021年1月23日(土曜日)に、オンラインで行なうことになりました。今回のテーマ・セッションは、「Society 5.0時代に向けた天文教育」です。COVID-19による急速なリモート社会の到来で、サイバー空間とフィジカル空間の融合が進んでいます。天文教育、天文普及の分野も例外ではありません。大学等の施設に行けず試行錯誤しながら研究を進める学生や研究者、新しい生活様式に合わせて工夫を凝らす社会教育施設、オンライン観望会やAR・VRの活用による普及活動、そして学校現場のICT活用やオンライン授業等、困難な状況を乗り越えるための様々な報告が各地から挙げられています。もともと、COVID-19以前から、遠隔で何かを実施するという社会の流れがあり、生活様式が変わろうとしていました。これらは国が「Society5.0時代」として推進しようとしていたものでした。COVID-19が一気にその流れを加速させたといえます。これからSociety5.0が実現する社会は、IoTで全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、課題や困難を克服します。アフターコロナの時代を見据えて、このSociety 5.0の本格的実装・展開をすべく、天文教育・天文普及のこれからを考えていけたらと思います。今回、本テーマに関係して、熊野善介 静岡大学教育学部教授に、STEM教育とSociety 5.0に関する基調講演を、前田昌志 三重大学教育学部附属小学校教諭には、この実践に関する講演を予定しています。本研究会は、会員による一般発表(天文教育の実践の発表)も行われます。支部会の役割として、研究発表の場を設けるとともに、研究会に参加された皆様との交流を行うことも重要な活動の一つです。今回、想定より多くの方に参加いただけることになり、一人一人の近況などを皆さんで話し合う時間が足りないので、Jamboardを利用した自己紹介や、ブレイクアウトルームでのグループ交流会を実施することにしました。

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2021年1月23日(土)

午前の部

9:30  ZOOM接続(世話役)

9:45- 参加者のZOOM接続(午前中発表者の接続テストなど)

 

10:00 開催のあいさつ

諸注意、ブレイクアウトルーム(Jamboard)の使い方の紹介

参加者の自己紹介(午前中のみの参加者)他 (20min)

10:20 一般講演1(100min)座長:内山秀樹

10:20大西 浩次(国立長野高専)

「長野県は宇宙県」の近代天文学史100年にむけて

「長野県は宇宙県」の活動で作られてきたネットワークを生かして、100年間の天文学史・天文文化史を研究者と市民の協働作業で明らかにする企画を進めている。来年、100周年を迎える諏訪天文同好会を中心に、「長野県は宇宙県」に関わった県内外の多くの研究者やアマチュア天文家との相互作用を明らかにしたい。今回は、この企画の概要について紹介する。

 

10:35衣笠健三(国立天文台野辺山宇宙電波観測所)

「長野県は宇宙県」キーワードラリー2020

 

「長野県は宇宙県」では、「宇宙県」としてふさわしい美しい星空と自然環境、天文学の研究教育活動、星空観光など、多くの魅力を共有するため、2017年よりスタンプラリーを企画してきました。今年度は、COVID-19感染拡大防止のため、キーワードラリー2020をオンラインにて実施することにしました。各施設や団体からの動画コンテンツを視聴して、コンテンツに出てくるキーワード、またはクイズに答えることで、スタンプラリーのように各動画を巡ってもらうイベントとなっています。

 

10:50-11:00 ブレイクタイム

11:00市川京佑(静岡大学教育学部)

一般相対性理論から見るブラックホールの構造

 

一般相対性理論の考え方、数学的手法を用いてアインシュタイン方程式を解き、シュヴァルツシュルト解を導き出し、その過程を通して、特定条件下でブラックホールとはどのようなものであるのかを理解する。また、それらを教育分野に生かして、興味のニーズに応えていくことは可能であるかの考察も行なっていく。

 

11:15 竹澤寛亮、辺城鍾、青嶋広澄、内山秀樹(静岡大学教育学部)

UDONを使った原始星・恒星からのX線フレアの解析

 

天体をはじめあらゆる物質はその温度に応じた電磁波を放出する。恒星の表面は数千〜数万Kで可視光を主に放出する。しかし、恒星や原始星では数千万Kに対応するX線フレアが観測されることがある。これほど高温な物質(プラズマ)を作る加熱源は磁気リコネクションが考えられる。本研究では原始星・恒星のX線フレアを、オンライン上で使えるX線データ解析ツール「UDON」で解析し、簡単な磁気リコネクションのモデルで解釈した。UDONを使ったこの解析は、高校生の探究授業等でも活用できる可能性がある。

 

11:30-11:40 ブレイクタイム

11:40伊藤 信成(三重大学 教育学部)

zoom観望会のメリット・デメリット

 

新型コロナウイルス感染症のため、これまで行ってきたような対面型の観望会の実施が難しくなっている。そんな中、オンライン会議システムであるzoomを用いた観望会を試行した。観望会は6/21の部分日食、10/1の中秋の名月を対象に行った。実施の内容、メリット・デメリットについて報告する。

 

12:00-昼食・ブレイクタイム

 

午後の部

13:00-15:00 特別セッション「STEM教育とSociety 5.0」(120min)座長:矢治健太郎

13:00 趣旨説明(伊藤信成)

 

基調講演:

13:00 熊野善介(静岡大学教育学部教授)

21世紀型の資質・能力をどうとらえ、Society5.0に答える人材を養成するのか。

―STEM教育が展開している諸外国と日本の比較から、見られる理論と実践から―

 

OECDの国々が抱える新しい人材育成モデルはSTEM/STEAM教育を基盤としたPBLと呼ばれる教育であるといえるが、その状況を諸外国から見出し、理論と実践を事例的に示しながら、我が国の状況と、できうる日本型のモデルを、「静岡STEMアカデミー」の事例をもとに展開する。

 

14:10 前田 昌志(三重大学教育学部附属小学校)

小学校第6学年「月と太陽」におけるドローンとVRの活用

~イノベーションにより学習者のニーズに対応できる教育へ~

 

AIなどの技術革新が進むSociety5.0という新たな時代に対応するためには、学校教育も変化していかなければならない。そのためには、ICTを基盤とした先端技術を効果的に活用することで、子供の力を最大限引き出していくことが求められる。本校では、ドローンやVRを教育現場に活用し、質の高い教育の実現を目指している。ドローンやVRは、これまでの教材・教具で対応しきなかった視点を補完し、学習者のニーズに対応できるものである。

 

15:00-15:15 休憩

 

15:15  一般講演2(40min)座長:船越浩海

15:15  天野ステラ(天文仮想研究所)

自宅から体験するVR天文・宇宙

 

ソーシャルVRプラットフォームでは、遠隔地をオンラインで繋いで会話するだけでなく、自分でVR空間内を移動して実物大の模型を動かし、さらにはリアルタイムに打ち上げなどのシミュレーションを体験することが可能である。我々はVRChatというサービスを利用して天文・宇宙に関する解説会を開催してきた。参加者同士や参加者と空間との相互作用によって、全く新しい天文体験に自宅にいながら参加できることも大きな魅力の一つである。

 

15:30  野寺凜(黒部市吉田科学館),三田村耕平(大阪大学),

木村朱里(佐賀県立宇宙科学館)

3Dプリンターの天文教育利用

 

3Dプリンターは、3Dモデルのデジタルデータを基に物体を作製する機械である。天体や探査機などを立体的に感じるには、間近で観察することや直接手に触れることが困難であるため、3Dプリンターによる模型作製が有効である。また、3Dプリンターによる手に触れられる教材の作製は、ユニバーサルデザインにも有効である。本発表では、3Dプリンターおよび3Dモデルを用いた天文教育の事例と今後の活用の案を紹介する。

 

15:45 ブレイクタイム

15:55  一般講演3(40min)座長:大西浩次

15:55 豊田浩一、鈴木七海、榑松恵都、奥之山翔大、内山秀樹(静岡大学教育学部)

“子供達と共に成長する”教育用超小型人工衛星「さち」の構想

 

小中高生への教育利用を目指した超小型衛星「さち」を構想した。本衛星はGPSで測った経緯度と対応するご当地情報をFM電波の日本語音声で送信する。子供達はその受信実験を授業で行う。ご当地情報は子供達から募り、運用期間中に衛星に送信することで、衛星が「成長」する。これにより、子供達は当事者感覚で学習に取り組める。子供達は受信実験を通じ、自身の学ぶ理科や数学の内容を定量的に確認でき、それらが生活に役立っているという実感を得られる。本衛星の詳細と現在行っている試作について報告する。

 

16:10 矢治 健太郎(核融合科学研究所)

おうちで国際会議に出てみよう。

 

新型コロナウィルスの影響で、2020年は多くの国内外の研究会や会議がオンラインで開催された。だが、おかげで、日本にいながら天文教育関係の国際会議にも気軽に参加できるようになった。もちろん、時差やコミュニケーションという点で問題は残るが、日程や渡航費用などを気にしないでいいのは大きい。この発表では、いくつか参加した国際会議での様子を紹介しつつ、その利点や問題点などについて触れたい。

 

 

16:25-17:00

ブレイクアウトルーム(Jamboardによるグループ交流会)、ほか、

まとめ

17:00(終了予定)

世話人(実行委員)

大西 浩次(国立長野高専)、前田 昌志(三重大学教育学部附属小学校)

沢  武文(元愛知教育大学)、船越浩海(ハートピア安八天文台プラネタリウム)

矢治健太郎(核融合研)、内山 秀樹(静岡大学)