新春の候、皆様方におかれましては、御健勝のことと、謹んでお慶び申し上げます。2019年、会長を仰せつかった年の暮れ、新型インフルエンザの報に触れたときには、まさかこんなに長期間にわたり行動が規制され社会が止まるとは想像もつきませんでした。そして、3年。オンラインの活用が当たり前になり、働き方や交流の仕方が大きく変わりました。教育現場としては、昨年夏の甲子園、優勝監督の仙台育英高須江航監督のインタビューにあった、「僕たち大人が過ごしてきた高校生活とは全く違う。青春って、すごく『密』なので」という言葉に象徴される様に、本来なら経験してもらえたことがらを提供できなかったことをとても残念に思います。
しかしながら、徐々にですが制限が緩和され、様々な活動が実施できる状況になってきました。私の勤務校では、人数制限をしながらの対面形式での講演会が復活し、宿泊を伴う修学旅行も行える様になりました。11月8日の皆既月食の際には、屋上で観望会を行い、多くの生徒や教職員に赤く染まった月やその傍らに青く輝く天王星の姿を見てもらうことができました。
本会に目を向けると、この3年で身につけたオンラインスキルを活用し、各地で活発に活動が行われました。特に、オンラインと対面併用のハイブリッド開催となった第36回天文教育研究会(本会年会)では、私は会場での参加、そして発表を行うことができました。場所に束縛されないオンラインの利点は理解しながらも、場を共有できる喜びを噛みしめました。久しぶりのお会いする方との立ち話、新たな方との出会い、会場にいらっしゃる方に聞いてみたかったことを伺ったりと、久々の対面の会を満喫することができました。大変な準備を経て運営していただいた野上実行委員長をはじめとする実行委員会の皆さまには心より感謝申し上げます。
また、支部会や支部会主催の茶話会、Mitakaワーキンググループによるワークショップ、若手天文教育普及ワーキンググループによる講演会、オンラインイベントなど、天文教育普及に関する本会の活動も活発に行われました。メーリングリストからは、一昨年にも行われた皆既月食同時観測が岸本会員の呼びかけから構築され、NAEC(IAU National Astronomy Education Coordinator)日本代表の富田会員を通じてドイツとの衝の火星の同時観測に発展しました。解析結果が楽しみです。
今年は国際学会も日本で開催され、対面開催が復活します。8月7日からIAUアジア太平洋地域の天文学に関する国際会議(APRIM)が福島県郡山市で開催されます。Public Outreach、Educationのセッションもあります。またGHOU(Global Hands-On Universe)Conferenceが8月21日より鹿児島県鹿児島市で開催されます。国際学会の直接参加は旅費など敷居が高いですが、国内で行われるまたとないチャンスです。新たな世界をぜひ体験してみて下さい。
新型コロナ感染症の影響はまだまだゼロにはできませんが、3年をかけて私たちはうまく振る舞える様になってきたのではないでしょうか。その中で自らが様々な経験をし、そこで得たものを、教育現場や社会教育の場、そして周りの方々に伝える、楽しんでもらえるような年にしたいと思います。
2023年1月1日
松本 直記 (日本天文教育普及研究会 会長)