2020年新年のメッセージ

2020年を迎えて

岡村定矩

一般社団法人 日本天文教育普及研究会会長

令和2年の幕が開きました。昨年の年頭挨拶に「昨年は自然災害の大変多い年でした」と書きました。今年もまた残念ながら、年頭に同じ事を書かなければなりません。8月の九州北部豪雨、9月に関東地方に上陸した台風15号、さらに10月に上陸して広範囲に甚大な災害をもたらした台風19号と、まさに異常気象を実感させるものでした。被災された方々には心からお見舞いを申し上げます。ホームページに掲載しておりますが、本会では被災された会員の方には「会費免除」の措置を取っております。

昨年8月に志賀高原で開催された年会時に開催された代議員総会と会員全体集会は、新法人として事業を実施してから実質上最初のものでした。執行部としては発足以来、法人法と定款に従って、会員の活動がやりやすい運営体制を目指して努力してきました。しかし1年で充分な対応ができず、いろいろ不手際もあり会員の皆様からお叱りをいただきました。終了後お届けした会長の事情説明([tenkyo:08403])にありますように、会の運営に関する情報が、より目に入りやすい形で会員の皆様に届くような公表・周知の仕方、および会員の皆様の意見をうまく集約できるような仕組み・流れについて理事会で検討を続けています。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。これに関連して、本会の事務局運営をサポートする事務局員を若干名募集しています([tenkyo:08495])。名乗りを上げていただければ大変ありがたいです。

2019年度第2回(臨時)代議員総会の報告(「意見募集」の中間報告を含む)は、「事務局からのお知らせ」としてメール版および会誌(2020年1月号)でお届けします。懸案であった年会は、オリンピックとパラリンピックの狭間の8月16-18日に、福島県郡山市近郊で開催することになりました。皆様、日程の確保をお願いします。

昨夏の年会ディスカッションセッションでは、「若手」、「中堅」、「ベテラン」の立場から、活動を活発化する具体的な提案が色々出てきました。それを踏まえて今年も、支部会、分野、WGを通じて天教の会員の活発な活動が繰り広げられることを期待しています。年会での議論を踏まえて学校教育分野から提案された『高等学校理科「地学基礎」における天文分野の内容再編・縮小に関する声明』は、現在執行部で最終案を作成中です。この声明は天教の活動の第一歩にすぎません。大事なことは、ほぼ10年先の次の学習指導要領での改善を関係各方面に働きかけ、実現していくことです。本会の重要な活動の一つとして取り組みましょう。

昨年は国際天文学連合(IAU)創立100年周年でした。これを機会にIAUの「戦略計画2020-2030」日本語版の制作を本会が中心となって行いました。本会のホームペ-ジからアクセスできます。職業天文学者の組織であるIAU は、100年間の天文学の飛躍的な進歩を背景にして、天文学者の「国際交流と研究の促進を目的とする組織」から、天文学をベースとした教育、アウトリーチ、社会発展プログラムなどを重要な活動分野として含めた「社会に関わる組織」へと大きく変貌しています。戦略計画には5つの目標が掲げられていますが、そのうちの4つは広い意味で天文学と社会の関わりに関するものです。IAUはこの戦略計画の実施によって、国連の定めたSDGsの169のターゲットの約半数に貢献できるとしています。

戦略計画の中で特に社会との関わりが強いのは、目標3の「全ての国で発展のための手段として天文学を利用する」、目標4の「一般市民の天文学への関わりを促進する」、および目標5の「学校教育レベルで指導および教育での天文学の利用を推進する」です。目標4と5は、本会の活動と完全に重なっていることが分かります。目標5の活動の中心となる「教育のための天文学推進室」は、ハイデルベルグの Haus der Astronomie (HdA)に設置されることが昨年11月末に決まりました。この室の具体的活動が始まれば、本会の学校教育分野の活動の幅も大きく広がると思います。目標4の中核組織である「国際普及室」は、ご存知のように日本の国立天文台に置かれています。本会の会員の多くの皆様にも協力をいただいている日本天文学会のインターネット「天文学辞典」の改善と更新は、目標4の先進的な事例の一つです。おかげさまで2018年4月の公開以来、アクセス数は全体として増加を続け、知名度も上がってきました。

「宇宙に対する興味と感動」を共通のベースとして多様な活動を展開しているみなさん、今年はIAUの目標のなかにみなさんの活動を位置づけてみませんか。そうすることはまた、SDGsへの貢献にもつながると自ら意識することにもなります。昨年12月のCOP25マドリード会議ではパリ協定の「1.5-2℃未満目標」を達成できる見通しは得られませんでした。どんな小さな取り組みでも、たくさん集まれば社会の意識を変えられると思います。

令和2年が皆様にとって良い年となるよう願っています。

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