新会長からのメッセージ

2018年8月に会長に就任した岡村定矩です。私はこれまで東京大学で1978年から34年間天文学の教育研究に携わり、2012年に東京大学を定年退職した後は法政大学で2018年3月まで教鞭を執っていました。法政大学定年後、2018年4月からは東京大学の社会人教育プログラムである東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大EMP)の企画推進に携わっています。

一人の天文学者としての活動以上に天文教育普及に注力した訳でもなく、また本会の会員でもなかった私が突然、第9代(法人化後第2代)の会長に就任して、違和感や戸惑いを覚えられた会員の方が多かったと推測します。2018年2月に数名の方から立候補を依頼されたことは私にとってもまさに晴天の霹靂で、当初は大変当惑しました。しかしその後推薦者の皆様と面談を重ねることによって気持ちが変わってゆきました。「人と宇宙の関わり方をどうデザインしていくかという観点がこれからの世界に必要である」というご意見には私も全く同感でしたし、日本天文教育普及研究会がそれを力強くになう組織になって欲しいという熱意も十分に感じられました。その上で、法人化されて新しい歩みを始めるこのフェーズで私がお役に立てることがあるということでしたので、最終的には推薦をお受けすることを決め、会員の皆様の信頼を得て会長に就任しました。

本会は、学校教育関係者、生涯学習関係者、そして一般市民の立場で天文普及に関心を持つ方々、などなど実に多様な立場の会員から構成されています。唯一の共通項である「宇宙に対する興味と感動」をベースにさまざまな活動が行われています。1989年の本会設立に中心的な役割を果たした故磯部琇三氏は私の友人でもありました。その後磯部初代会長から、水野孝雄、横尾武夫、沢 武文、松村雅文、嶺重 慎、縣 秀彦の諸氏に引き継がれた会長はじめ歴代の執行部、事務局、編集委員、運営委員等の役員の皆様は、本務の傍ら手弁当で会の運営を支えて来られました。会長就任に当たり、これらの方々および本会の多様な活動を続けてこられた会員の皆様に敬意を表します。私は任期の2年間、法人としての本会の土台作りと将来の発展のために全力を尽くすつもりです。

私は今後以下の諸点を重点課題として活動します。これらの課題に取り組む中で、「人と宇宙の関わり方をどうデザインしていくか」を常に意識して行きたいと思います。

1. 法人化後の当会の運営を安定させ、持続的発展可能な土台を作ります
2. 天文教育・普及に関する基礎資料の収集体制を構築します
3. 会員が推進する活動を支援するための仕組みを構築します
4. 天文教育・普及に関わる若者のキャリア支援を強化します
5. 他団体/組織との協力関係を強化します

「グローバル」という言葉が昨今大流行しています。グローバルは人間の住む世界としての地球を意味する英語のglobeに由来します。グローバルなものの見方と言えば、国や地域などの枠を超えて、全地球的視野でものを見ることです。国際連合は2015年9月の第70回総会で、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)をまとめました。SDGs(エスディージーズ)は持続可能な開発のための17のグローバル目標を掲げ、その下に169の具体的な達成基準を掲げています。前文には、「このアジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画である。」と記されています。また、「母なる地球」が多くの国及び地域において共通した表現であることを再確認するとの宣言も書かれています。

本会の活動のベースである「宇宙に対する興味と感動」は、グローバルを超えたユニバーサルな視点への入り口です。宇宙とその歴史、そして宇宙に住む人類を考えれば、地球という太陽系の一つの惑星にとどまらず、宇宙という視点で物事を考えることができるはずです。SDGsの中には、宇宙の中の地球というユニバーサルな視点を特に必要とする目標も掲げられています。会員としての皆さんの多様な活動をSDGsの中に位置づけて見ると新たな気づきがあるのではないでしょうか。

本会は、天文教育の振興および天文普及活動の推進に賛同される方なら、どなたでも入会できる開かれた研究会です。個人・団体を問いませんし、職業や経験・経歴も全く気になさる必要はありません。研究をして学術論文を発表すること主目的とした従来の学術団体とは異なるフレンドリーな研究会です。ぜひ、本会定款等をお読みいただき、日本天文教育普及研究会の活動にご参加ください。

2018年9月1日 日本天文教育普及研究会
会長 岡村定矩