2020年のオンライン年会にて信任をいただき会長に就任した松本直記です。私は1990年から現在まで慶應高校にて理科(地学)の教員として働き、その間、横浜国立大学講師(情報系科目)、慶應義塾湘南藤沢中高等部講師(中2と高3)、慶應義塾大学講師など務めてきました。主に中等教育の地学を中心に活動して参りました。高等学校地学は固体地球から地球史、気象学や海洋学、天文学を含む広大な範囲を扱う科目です。これらは独立しているのではなく密接に関係し合いながら、私たちの生きる環境に影響を与えています。実感を伴うのが大変難しい科目ですが、その面白さ楽しさを伝えようと努力して参りました。
元々は小学校の時、お年玉を貯めて口径8cmの屈折望遠鏡を買った天文小僧でした。大学時代の専門は高層気象で、少し天文から離れてしまいましたが、地学教員となることで再び天文に触れることができるようになりました。
本会年会に初めて参加したのは1998年さじアストロパークで行われた第12回年会です。合宿形式で、参加者どうしの距離が近く、発表セッション以外の交流も非常に活発で、部屋を行き来しての議論が夜遅くまで続きました。当時私は、教育系の学会に多数参加していましたがこのような濃密な会は経験が無く、大変に魅せられました。
その後、関東支部委員、学校分野委員などを務め、編集委員会を引き受け、2016年からは編集委員長をさせていただきました。本会が法人化してから1期2年を終え、編集委員長を引き継ごうかという時期に、次期会長を打診されました。天文教育界、天文学界の中でキラ星のごとく輝く歴代の会長の顔ぶれが頭をよぎり、いったんは固辞いたしましたが、推薦いただいた方々とのお話を深める中で、一介の高校教師である私の視点で会を見るのも、今、求められているのではないかと思い推薦を受け、立候補することといたしました。年会では皆様の信任をいただき会長となりました。
本会は、1989年初代会長、磯部琇三氏を中心に設立し、水野孝雄、横尾武夫、沢 武文、松村雅文、嶺重 慎、縣 秀彦、岡村定矩の諸氏が会長を務められました。この間、会長はじめ歴代の執行部、事務局、編集委員、運営委員等の役員の皆様の尽力によって会が運営されてきました。会の運営に関係された皆様、そして様々な活動を続けてこられた会員の皆様にはここに敬意と謝意を表したいと思います。
2018年には法人化という大きな課題を達成しました。実際の運用と規約などの摺り合わせは現在も継続して行われています。引き続き、会の運営が安定的に行われよう、尽力して参ります。
冒頭、高等学校地学について述べましたが、現在の地学基礎の履修率は3割程度です。従って多くの高校生は高校時代に天文学を含む地学の内容に触れません。この問題は以前より取り組んで参りました。天文を学ぶ小学校、中学校の指導内容、構成についても検討が進んでいます。教育現場のフォローを考えながら、教育制度に対しての提言をしかるべきタイミングで行っていきたいと考えています。
会員の皆様の多種多様な活動こそが、本会の原動力です。色々な活動に触発され、人と人とが出会い、協力し、互いに協育し、新たな活動が生まれます。会員の活動が円滑に行えるよう、支援体制を強化していきたいと思います。特に、若い世代の人々が活躍できるような支援をしていきます。
本会の天文教育・アウトリーチの国際的な窓口としての役割も重要となってきています。国際天文学連合(IAU)は、成長戦略に基づき、教育活動に関して熱心な支援を行っています。昨年「教育のための教育推進室」(OAE)が設置され、各国にNAEC; National Astronomy Education Coordinatorチームの設置を呼びかけました。NAECチームの実質的主体が、本会のIAU 天文教育コーディネーターWGです。会員諸氏の活動のみならず、日本の天文教育活動と世界を繋げる役割を果たしていきたいと思います。
日本天文教育普及研究会は、天文や宇宙に興味のあるどなたでも入会いただけます。様々な立場の会員がおられ、多種多様な知見が得られます。ご自分のやりたいこと、やってみたいこと、やっていることについて多様な視点からの示唆が得られるでしょう。また、様々な立場の方に有益となるような会になるよう尽力して参ります。ご興味の方は、是非入会をご検討ください。
2020年9月1日 日本天文教育普及研究会
会長 松本直記