2010年 6月 6日〜7日の二日間、東京都三鷹市の国立天文台本部にて、「ユニバーサルデザイン(UD)天文教育研究会」が開催されました。国立天文台主催、天文教育普及研究会共催のもと、天文教育普及研究会・UDワーキンググループが中心になって企画しました。「UD天文教育」とは、「ユニバーサル(すべての人のための)デザインをベースにした天文教育」を意味する造語です。従来の天文教育普及活動でとかく忘れられがちな障害者(視覚、聴覚障害者など)や特別支援学校の生徒、病院に長期入院中の子どもなどを意識した天文教育活動を意味します。 *研究会案内のサイトを開く
UD天文教育は、決して特殊な立場にある人々が対象の「特別な活動」ではなく、「普遍性」をもつ活動であることを強調しておきます。誰にもわかりやすい天文の魅力、コミュニケーション手法を探るという観点から、天文教育普及活動をとらえ直すことは、研究・教育者と一般市民の間に横たわるバリアを明らかにし、それをとり除くことにつながります。そこに本研究会の、そしてUDワーキンググループの目的があります。
集録を本Web上で公開するにあたり、図・写真や表を含むPDFファイルと、図・写真を含まないWordファイルの2種類を作成しました。PDFファイルでは、弱視の方もお読みいただけるようにゴシック体を使用したほか、図・写真を可能な範囲で大きく掲載するように編集しました。さらに、タグ付きPDFにしています。 Wordファイルは、図・写真の説明を加え、表をできるだけ読みやすい形に変換するように努めました。また、docx形式に対応していないスクリーンリーダー(音声で読み上げるソフトウェア)もあることから、全てdoc形式で保存しています。
編集作業が遅れ、集録の公開が遅れましたことをお詫び申し上げます。
1. 研究会集録
以下の集録一覧は、研究会での講演順とは異なります。また、集録執筆者の所属は、2010年6月当時のものです。 *当日のプログラムを見る
(1) 視覚障害とUD天文教育 | |||
---|---|---|---|
「さわってみる」点示学事始め −六星から満天の星へ− | 広瀬浩二郎 | Word | |
天文学図書における天体写真の点図化について 〜その方法と課題〜 | 久部幸次郎・久部悦子 | Word | |
「天文学入門」出前授業をお受けして 〜デジタル教材作成の必要性について〜 | 小池貴之 | Word | |
盲学校(視覚障害特別支援学校)における天文分野の指導事例 〜教材の工夫について〜 | 柴田直人 | Word | |
公共天文台における触覚型展示資料の可能性に関する研究 | 菊池秀一・中村正之 | Word | |
視覚障がい者と共に楽しむ「フィーリング・プラネタリウム」の取り組み | 杉中 慎 | ||
アメリカの科学館におけるバリアフリーの取り組み | 根本しおみ | Word | |
ユニバーサルデザイン天文は双方向で 〜互いの"思いこみ"を少なくするために〜 | 藤原晴美 | Word |
(2) 聴覚障害とUD天文教育 | |||
---|---|---|---|
新天文手話法 | 飯塚高輝 | Word | |
聴こえる人も聴こえない人も共に楽しめる 〜字幕付プラネタリウム〜 | 根本しおみ | Word | |
札幌市青少年科学館における『字幕付きプラネタリウム』の実践例 | 石垣梓 | Word | |
名古屋における聴覚障害者への字幕プラネタリウム活動について | 田中芳則 | Word | |
プラネタリウム映画への字幕後付け技術の開発 | 秡川友宏 他 | Word |
(3) 病院やその他の特別支援学校とUD天文教育 | |||
---|---|---|---|
いつも ちかくにいるよ | 神田美子 | Word | |
小児科病棟での軒下観望会の試み | 犬飼岳史 | Word | |
重度身障者用天体観望延長接眼部の開発 | 渡部潤一・奥村泰司 | Word | |
ホスピスにおける観望会 | 尾崎勝彦 | Word | |
特別支援学校での宇宙のお話 | 富田晃彦 | Word |
(4) 市民・地域・福祉と科学をつなぐ | |||
---|---|---|---|
科学と福祉をつなぐ | 中川律子 | Word | |
ネットワークで地域を耕す! 〜星と風のカフェと 国立天文台〜 | 松崎伸一・縣秀彦 | Word | |
市民が創るサイエンスコンサート 〜科学と音楽でつながる市民の輪〜 | 網倉聖子 | Word | |
見えない宇宙を共有する 〜「星の語り部」の活動〜 | 高橋真理子・星の語り部 | Word |
(5) 発展途上国とUD天文教育 | |||
---|---|---|---|
カンボジア国内での活動報告 〜発展途上国での天文教育普及を考える〜 | 小幡真希 他 | Word |
(6) 議論 | |||
---|---|---|---|
初日 まとめの議論 | 臼田-佐藤功美子 | Word | |
2日目 グループディスカッション | 各グループリーダー | Word |
(集録一覧終わり)
2. 研究会の報告
天文教育普及研究会・UDワーキンググループ、嶺重慎代表による本研究会の報告
- 国立天文台ニュース、2010年7月号 (12ページに掲載) 国立天文台発行
- 2010年7月号を開く / 国立天文台ニューストップページを開く
- Wordファイルをダウンロードする
- 天文月報、2010年11月号 707ページ 日本天文学会発行
- 2010年11月号の報告を開く / 天文月報のトップページを開く
- Wordファイルをダウンロードする
3. 専門用語の解説
集録原稿に出てくる、ふだんあまり使われない用語の解説を「集録に頻出する専門用語」としてまとめました。
4. 研究会後の主な活動
本研究会が開催されたことにより、今まで天文に関わりのなかった方々や、視覚・聴覚障害者が天文関係者と出会いました。そして、これまでにも増して科学館等で UD天文をテーマとして講演会が開かれるようになりました。バリアフリー絵本プロジェクトや手話付き講演会など、2010年 6月以降のUDワーキンググループメンバーによる研究会後の主な活動をまとめました。
5. UDワーキンググループ活動報告
2006年8月に設立された、天文教育普及研究会・UDワーキンググループの6年間の活動をまとめた報告書。(2012年8月、第26回天文教育研究会(2012年年会)集録より)
PDFファイル / Wordファイル
6. 「障害者」の表記について
「障害者」の表記については、いろいろな立場の方々がそれぞれの考えに従い「障がい者」、「しょうがい者」などの表記方法を使用している例を最近よく見受けます。その一方で、「障害」の表現を変えることは、障害に対する認識の本質を変えることにはならず、かえって障害におけるさまざまな課題を遮蔽することにつながるという、障害者や障害者福祉の専門家らの意見もあります。本研究会の主催者側としては、これらの状況を踏まえ、本サイト上で主催者が提示する文章については「障害者」と表記することとします。しかし、各著者が使用している表現についてはこれを尊重し、特別な編集、書き換え等は行わないこととしました。
この集録サイトに関するお問い合わせ先
udwg2010*at*gmail.com (*at* を @ に置き換えて下さい。)