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惑星系 HR 8799の解説

直接撮像法で初めて発見された複数系外惑星系

主星名
(カタログ名)
惑星名
(記号表記)
惑星の質量
(木星質量)
惑星の質量
(地球質量)
公転周期(日) 軌道長半径
(天文単位)
発見(年) 星座名 星座名の意味 可視性 V等級
HR 8799 HR 8799 b 7 2224.8 164250 68 2008 Pegasus
ペガスス
The Winged Horse Faint to the naked eye 6
HR 8799 c 10 3178.3 82145 42.9 2008
HR 8799 d 10 3178.3 41054 27 2008

HR 8799 b, c, d
 双眼鏡を使うとペガスス座の空に見ることができる約6等級の星,HR 8799は,地球から128光年先にあるスペクトル型がA型で太陽より重たい恒星です。

 カナダの天文学者クリスチャン・マロア博士らによる研究チームはHR 8799をマウナケア天文台のジェミニ望遠鏡やケック望遠鏡を用いて観測しました。その際採用された観測手法は直接撮像法です.数年間にわたる観測の結果,マロア博士等は恒星 HR 8799を3つの巨大惑星が公転していることを明らかにしました。このように複数の巨大惑星をもつ惑星系が直接撮像法で発見されたのはこれが初めての例です。

 同研究チームの分析によって, HR 8799 b, c, dはどれも木星の数倍から十数倍程度の質量をもつ巨大惑星であることが分かりました. また,それぞれの惑星は中心星であるHR 8799から約20天文単位から70天文単位の距離離れています (HR 8799 b, c, dの軌道については図1を参考)。

 2010年に報告されたため,今回のキャンペーンの対象には含まれていませんが,“d”より内側には,さらにもう一つの巨大惑星“e”が発見されています。HR 8799 eも他の惑星と同様に質量の大きな巨大惑星であることがわかっています。

 この様に,HR 8799惑星系に存在する惑星は我々の太陽系の惑星と比較して特異な特徴を持つことがわかります。従って,惑星の起源や進化を研究するうえで興味深い対象であると言えるでしょう。

本記事執筆にあたり参考にした文献:
Marois, C. et al., 2008, Science 322, 1348
Marois, C. et al., 2010, Nature 468, 1080

HR 8799の惑星の観測結果を紹介している日本語ウェブサイト
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20101209001
http://www.naoj.org/Pressrelease/2009/05/21/j_index.html

文責:葛原昌幸(東京工業大学)


図1: HR 8799系の惑星の軌道の模式図。内側の赤の破線は中心星から30 天文単位の距離に相当します。“b”の外側には塵や残存する微惑星からなる残骸円盤が存在することが知られています。(提供: 国立天文台)


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