集録原稿に出てくる、ふだんあまり使われない用語の解説をここにまとめました。

1. 視覚障害

● 視覚障害者と晴眼者

    目の不自由な人を視覚障害者といい、視覚障害者に対し、視覚に障害が無い人のことを晴眼者という。視覚障害者は、視覚を持たない「全盲」と、視覚はあるが見えにくい「弱視(ロービジョン)」にわけられる。「弱視(ロービジョン)」の人には、メガネやコンタクトレンズで矯正しても視力が出ない、視野が狭い、まぶしく見えるなど、人によりいろいろな見えにくさがある。

● 点字・墨字(すみじ)と点訳・音訳(おんやく)・墨訳(すみやく)

    触覚を使って読める、凸点を組み合わせた文字のことを点字という。通常、用いられている点字は、横2×縦3の6つの点の組み合わせで表現される。点字に対し、視覚を使って読み書きする文字のことを墨字という。墨字で書かれた文書を点字・点図にすることを点訳、音声にすることを音訳、逆に点字を墨字にすることを墨訳(または墨字訳)という。

● 触図(しょくず)または触知図(しょくちず)と点図

    画像やグラフなどを点や線の盛り上がりで表現し、触覚を使って読む図を触図または触知図といい、このうち特に点を組み合わせて表現したものを点図という。最近、点図はエーデル(後述)というパソコンソフトで作成したものを点字プリンタで出力できるようになった。また触図を描くのに、白黒で書かれた図の黒い部分が盛り上がって印刷される立体コピー機や、触れるように盛り上がる樹脂が使われることも多くなった。

● スクリーンリーダー

    コンピュータの画面に表示された情報を、音声で読み上げるソフトウェア。コンピュータを操作する視覚障害者が、ワープロや表計算等のソフトウェアを利用したり、電子メールをやり取りしたり、ウェブサイトを閲覧したりする時等に使用する。

● エーデル (EDEL)

    藤野稔寛氏がボランティアで作られた点図作製ソフト。フリーソフトであり、無料でダウンロードできる。エーデルで作製した点図は、日本国内で市販されている点字プリンタ(現在は一機種のみが対応)で印刷可能である。

● デイジー (DAISY: Digital Accessible Information System)

    デジタルマルチメディア図書の国際標準規格で、デジタル録音図書(主に視覚障害者向けの)の作成にも使用されている。図書を構成する音声・テキストデータが構造化されていて、希望する見出し箇所へジャンプして再生できる等の特徴がある。

※天体画像の点図化の工夫、視覚障害特別支援学校、科学館やプラネタリウム等での実践例については、研究会集録 (1) 視覚障害と UD天文教育をご覧下さい。


2. 聴覚障害

● 聴覚障害者と健聴者

    聞こえの不自由な人を聴覚障害者といい、聴覚障害者に対し聴覚に障害が無い人のことを健聴者という。聴覚障害には、補聴器を使えば音の有無はわかるが言葉の識別が難しい「難聴」、最重度難聴の「ろう」、健聴者としての経験を持った後に聴力が低下した「中途失聴」がある。音声日本語を母語として使う「難聴」者と「中途失聴」者、手話を母語とする「ろう(あ)」者と区別するいい方もある。

● 手話と手話通訳

    手話は手や指、腕の動作、視線や表情などを使って表出する視覚言語で、音声言語と同等の言語である。手話通訳は、手話を使用する者と音声を使用する者との間を、手話通訳者が手話から音声に、あるいは音声から手話に変換を行って互いの意思疎通を図ることである。

● 要約筆記

    話されている内容や周りの音声情報をリアルタイムで要約し、文字として伝えることをいう。話すスピードは書くスピードより数倍も速く、全部は文字化できないため、要約して筆記する。ノート等に書いて隣から見てもらう方法、パソコンに入力しその画面を見てもらう方法、大人数向けに、パソコンに入力した文章をスクリーン等に映して見てもらう「パソコン要約筆記」などがある。パソコン要約筆記では専用のソフトウェア(IPTalkなど)を用いる場合が多い。

※天文に関する用語をわかりやすく表現した天文手話法、字幕付プラネタリウムや映画の開発等の実践例については、研究会集録 (2) 聴覚障害とUD天文教育をご覧下さい。


3. その他

● 情報保障

    視覚や聴覚などの障害により情報を収集することが困難な人に対し、代替手段を用いて情報を提供し「知る権利」を保障すること。視覚による情報収集が困難な場合の点字資料や音訳資料、聴覚による情報収集が困難な場合の手話通訳や要約筆記等が代替手段の例として挙げられる。

● ウェブ・アクセシビリティ (Web Accessibility)

    年齢や障害、利用環境等に関係なく、ウェブページにアクセスした誰もが情報を取得してその内容を理解でき、必要な操作を行うことができる状態にあること。例えば、画像に適切な説明をつける、文字サイズの変更が可能な状態にしておく、弱視(ロービジョン)者が白黒反転した画面にしても文字が読める、色覚異常者が見やすいような色のコントラストにする等の考慮が、高いアクセシビリティの実現につながる。W3C (World Wide Web Consortium) の勧告である、ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン (WCAG: Web Content Accessibility Guidelines) が多くの規格やガイドラインの元となっている。ウェブ・アクセシビリティをチェックするためのソフトウエアやサイトもある。

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