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2014年 会長からの新年のメッセージ


 新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 ながらく会長職を務めさせていただいていますが、今年はいよいよ最後の年になります。 思い返すと、至らなかったことばかり多く、内心忸怩たる思いがあります。最後の年を、次期執行部への引き継ぎ も含め、しっかり締めくくっていきたいと思います。

 本会は地域ごとに「支部」を設け、支部運営委員のもと活動を行っております。支部会に は、それぞれに独特の色があり、どこに行っても楽しい思いをします。2013年の12月には、近畿支部会に出席しま した。嬉しかったのは、59名の出席があり多くのユニークな発表が聴けたこと、京産大、京大、和歌山大、三重大等 の学生など、若い人の姿も多く、懇親会もとても盛り上がったことなどです。支部長の中道さん、開催地支部委員の 野上さんらのご尽力のおかげです。感謝します。
 近畿支部会には、恐らく史上最年少会員(11歳)も参加でした。自分で望遠鏡をつくりたい、という結構ハイレベル な会員です。支部委員にしていた質問は、なんと
「どこかで、真空蒸着する装置を借りられませんか?」
 このような輪の広がりが、本会の魅力であり楽しみであると実感しました。


 さて、4年弱の経験で、何度も痛感したのは、「実行することの難しさ」です。 こんなエピソードを思い出しました。とある著名な実業家がインタビューを受けました。
−「あなたにとって、一番難しいことは何でしょうか」
「実行すること。」
−「では、一番たやすいことは何でしょうか」
「人にアドバイスすること。」・・・
 なるほど。人に「アドバイス」して、その通りに事が進むと、まるで自分が「実行した」かのように思われて気分が よくなったりするものですが、それは「錯覚」に違いないのです。自ら動かないといけません。みながそれぞれ動いて 初めて、何かが始まります。
 もう一つ、忘れられないのは、松下幸之助さんのおことば。「知恵あるものは知恵を出せ、知恵なきものは汗を出せ」 という社訓をかかげた会社に対して、「こりゃあかんな。汗を流さんところで出た知恵なんて、本ものの知恵ではない わな。」
支部会や年会の発表を聞いていて嬉しくなるのは、そのような「汗を流した末の知恵」をたくさん聴ける ことなんだと納得しました。




 2013年10月の北海道支部集会で、渡辺謙仁さん(北大)が『星のコスプレ☆痛望遠鏡で星を 観る会』という題目で報告してくださいました。使用する望遠鏡は、「痛(いた)望遠鏡」(写真右)。「触ると痛い」 望遠鏡ではなくて、「痛車(いたしゃ)」(アニメキャラクターなどの装飾を施した車)をもじったことばだそうです。
 彼の講演には相当、刺激があり、支部会最後に行われた少人数にわかれた議論の場でも、多くの方が「最も印象深かっ た講演」としてあげ、感想が寄せられました。私などには、思いもよらないところで、宇宙や星のネタで盛り上がって いる若者達の姿が浮かび上がってきます。


 もう一つ、昨年の会合で特に若手の勢いを感じたのは、9月に国立天文台で行ったユニバーサルデザイン天文教育研究会 でのこと。病院活動セッションや(聴覚)障害セッションにおける若手の生き生きした発表が目をひきました。
 共通しているのは、既存の枠にたちながら、決してそこに安住することなく、時代の流れに合わせてさまざまな要素を 組み合わせ、独自の文化を築きあげようという、しなやかでかつしたたかな気概でしょう。


 今年は、会員ひとりひとりが、もっと「動く」年にしていただきたいと願っています。 何に「動く」かは、人それぞれです。支部会に参加する/発表をする、観望会を主催する/お手伝いをする、個人で/ グループで何か新しい活動を始めるなど、いろいろあると思います。
 月並みな言い方ですが、一年の計は元旦にあり。今年、何か、始めてみませんか。
 そして、その報告をぜひ「天文教育」誌に発表していただき、さらに多くの方々と共有しましょう。


2014年1月 天文教育普及研究会
会長  嶺重 慎



   

天文教育普及研究会 Japanese Society for Education and Popularization of Astronomy