2006年 9月12日
ご関係の皆様
天文教育普及研究会
会長 松村雅文(香川大学教育学部教授)
皆様におかれましては、天文分野における社会教育施設(天文教育施設)の設置・運営などにご尽力いただき、誠にありがとうございます。 さて、現在、公共施設の管理運営が見直され、博物館・科学館、プラネタリウム、公開天文台などの天文教育施設においても、指定管理者制度が導入されつつあります。当会は、同制度の導入が教育現場に及ぼす様々な影響を憂慮し、ご関係の皆様に慎重な対応を求めます。 天文教育施設は、市民の学習意欲に応えるための天文学習の場であるとともに、学校教育と連携した教育の場でもあり、さらに、それを実現するため、最新の学術成果に基づく資料の収集・保存、調査研究の役割を担っています。人類が長い歴史の中で築いた文化とも言える宇宙観に触れ、天文教育を通した科学的なものの見方・考え方を身につけるための重要な施設です。 これらの教育普及・文化振興の役割を果たすためには、施設職員及び事業内容には高度な専門性が不可欠であり、運営においては市民との信頼関係を築き、地域に根ざした長期的な視点による事業計画と実施が必要です。 指定管理者制度の導入に際して、短期的な収益性・効率性のみで管理運営形態が判断されるとすれば、教育施設としての根幹が揺らぎ、天文教育の質の低下を招くものと憂慮します。また、博物館法では、公立博物館の利用は無料が原則とされ、収益性・効率性のみによる運営は社会教育施設の意義そのものを否定することになります。 昨今の学校教育における「理科離れ」の問題は、依然として深刻な状況が続いています。このため、学校現場や社会教育施設のみならず、文部科学省をはじめ、大学・研究所・各学会等の様々な機関において、迅速な対処の必要性が叫ばれ、経済界やマスコミにおいても理科離れについて憂慮の念が表明されています。 天文分野は子どもたちの興味関心が高く、天文教育施設がこの問題に果たす役割は大きいものがあります。しかし指定管理者制度の導入により、教育施設としての役割が十分に果たせなくなれば、「理科離れ」の問題への貢献も充分ではなくなります。 天文教育施設が公共性を維持し、未来を担う子どもたちの健全な育成を図り、市民の生涯学習活動を長期に渡って支えていくためにも、当会は現在の指定管理者制度の導入状況を憂慮し、ご関係の皆様に次のことを要望いたします。 要望 (1)天文教育施設を有効に活用していくためにも、その施設の専門性を考慮し、各施設における専門職員の適正な確保と、その専門性の維持・向上を図っていただきたい。 (2)長期的な視点に基づき、市民に信頼され、市民と連携した事業を実施するために、施設職員が短期間で交代することがないような継続的運営を行っていただきたい。 (3)収益性のみによらず、長期的な見地に立って、公共施設の責任として資料の収集・保存と調査研究を実施し、文化の継承を図るとともに、市民の生涯学習機会を維持し充実していただきたい。
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天文教育普及研究会 Japanese Society for Education and Popularization of Astronomy