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2015年 会長からの新年のメッセージ


 新春を迎え、皆さまにお慶びを申し上げます。

 振り返ってみると、日本の科学界がSTAP細胞騒動に終始した2014年は、はやぶさ2の打ち上げ以外に社会全般の多くの人びとに広く関心を持ってもらえるような天文ニュースが無かったように感じられます。しかし、ESAの彗星探査機「ロゼッタ」がチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星への着陸に成功したり、ALMA望遠鏡が視力2000を達成したりと天文学史上重要な出来事もいくつもありました。

 貴重な天文現象がほとんど無かった年にも関わらず、大勢の人たちが10月8日の皆既月食のみならず、中秋の名月などを楽しむなど、明らかに人々の天文・宇宙への関心が高まっているように感じます。大晦日、紅白歌合戦を見ていると「流星」、「夜空」、「星」や「宇宙」という天文ワードが歌詞に登場する歌曲がたくさんあることに改めてビックリしました。天文教育・普及に関わっている私たちが考えている以上に星や宇宙は現代人にとって身近な存在または重要な心の拠り所なのかもしれません。 今年も2月から8月にかけてニューホライズンズが冥王星に接近する以外は今のところ大きな天文の話題はありませんが、4月4日(土)の皆既月食は全国で楽しめる好条件の月食です。また、主な流星群の中では、ペルセウス座流星群もふたご座流星群も月明りがなく好条件での観測が期待されます。昨年以上に多くの人たちが実際に星空を見上げることをきっかけに天文・宇宙に関心を持ち、宇宙の原理を理解することで、目先のことばかりではなく、大きなフレームで自分たちの立ち位置を確認して、将来に対しての夢や希望、そして、人びとが過去・現在・未来とつながっていくことの尊さを感じてほしいと願っています。

 今年は国連とユネスコが定めた「国際光(ひかり)年」であり、「宇宙からの光」をテーマに、ライトダウンイベントを中心に、年間通じて様々な天文イベントが世界中で実施される予定です。また、国際天文学連合が進める「太陽系外惑星のネーミング」もいよいよ命名したい惑星系への投票が始まろうとしています。地球型系外惑星の研究や地球外生命の発見への関心が社会的にも高まりつつあります。

 周囲の人々の様々な形での天文・宇宙への関心の芽生えを敏感に読み取り、客観的なデータや信頼性の高い理論、そして一緒に星空を楽しむという文化の共有に基づき、天文・宇宙への知識や経験がその人の人生観や世界観に還元されるよう地道な足場がけをしていくことが、天文教育普及研究会の使命であり、会員各位の生き甲斐の一つではないでしょうか?

 天文教育普及研究会への期待や社会使命が高まりつつある今日、当会自身が関係機関・団体・個人等と協力してさらなる情報の発信と共有に務め、会員個人の幸福実現のみならず、世界全体の社会幸福の実現に向けて、微力ながら一歩でも前進できる年となることを願ってやみません。天文教育普及研究会への入会やご支援をどうかよろしくお願いします。


2015年1月 天文教育普及研究会
会長  縣 秀彦



   

天文教育普及研究会 Japanese Society for Education and Popularization of Astronomy